ケニア日記

ケニアのNGOでのインターン記を綴っていたブログ。今は電器メーカーの財務で働いてます。

海外インターンシップに参加して

今度高校生に向けてインターンの話などをしなければならないので、これもまとめておく。
外で話すときはこういうこと話してくださいとかリクエストがあったりして本音を話せなかったり、僕にとってはどうでも良いことに対してフォーカスせざるを得なかったりするので、ここでは100%自分の感じたことやら、身も蓋もないことでも書いておこうかと思う。
 
 
まず一つ言えるのは僕にとっては海外インターンシップ(以下研修)に参加することは全く以てLife Changing Experienceではなかった。アイセックでもそうだし、海外ボランティア的なものを斡旋する団体は人生を変える経験をしよう、みたいなのを売り文句にすることが多いのだが、残念ながら僕が23年かけて積み上げてきた人生や価値観というものはたかだか2ヶ月の研修ごとき変わるほど薄っぺらなものではなく、特に何も変わらなかった。アフリカや開発について勉強して現地に行った結果は、あくまでも想定の範囲内で、また政府が国を挙げてODA獲得産業に注力している間は国が発展するはずもなく、大事なのは民間の力であり市場こそが問題を解決するという考えは変わらないし、むしろ行く前に持っていた考えが強化されたといえる。ただ現地に行く前は、アフリカ民間企業にたいした力はなく、もっと市場を開放し、外資を導入することによって問題は解決されると考えてたが、サファリコムを始め力のある現地企業を目にすることができたというのは一つ大きなことである。
 
思うに、「価値観が変わる」などといった出来事は基本的にインプットを通じて生じるものだと思っているので、海外に行って「価値観が変わった」などとぬるいことを言っているやつは、常日頃からインプットを怠っているか、情報を受け止めた気になって、スルーしてしまうような感受性が豊かでないか何も考えていない人だろう。10年、20年前ならば現地に行かなければ分からない情報というのも多かったのかも知れないが、通信技術の進歩に伴い世の中には情報があふれているので、少なくともマクロな情報であれば日本にいても簡単に知ることができる。
 
こう書くとじゃあ研修行く意味ないじゃん、と思われるかも知れないが、僕が一番価値を見いだしたのはやはり座学では得られない部分、コミュニケーションの部分だと思う。つまり「アフリカの現状」なるものを知りたければこのブログを読むのでも良いし、もっと専門的な情報はいくらでもあるし、実際に行った人の話を聞くことで知ることができる。その上で現地に行くことに意味があるとすれば持っている情報を確認するためというか、自分の中で腹落ちさせるため以上の意味は持たない。それよりもやはり、実際に行動することに伴う経験、これが大きいと思う。
僕はまず英語力がたいしたことはなく、かつ外国人と一緒に仕事をするという経験もなかったのでそれを得られたのは大きい。そしてうさんくさい数多くのケニア人相手に交渉する経験も積んできた。また、普通にスラムに近い環境の家に住むことで現地人と変わらない生活をした。つまり、行く前と後で知識レベルでは大きな違いはないが、このよう経験を通じて我らが濱田総長目標である、タフな東大生に近づいたのではないかと思う。この先どんな環境にあっても生き抜く力、というか何とかなるだろうという自信のようなものは得た。
 
後は思考の訓練にもなったと思う。別にこれは旅行でも得られる経験と思うのだが、僕は毎日ブログを書くために日々ネタを探していた。だいたいこのケニア日記で多いパターンはケニアの○○と題して、ケニアではこのようなものがある、それは日本とは違う。なぜか?と考えて、僕の考えを記すというものだ。これはググれば答え自体は見つかったりもするものだが、現時点では自分に答えは分からないので、それを考えることで思考の訓練になる。海外に行くと日本の知識や常識が通用せず、それらがリセットされるので知識にじゃまされることなくゼロベースで思考できるので結構楽しい。この考える過程が楽しかったことが僕が毎日ブログを続けられた理由だと思う。
 
 
研修に参加する理由は人それぞれだと思うので、まあ参加して満足するなら別にそれでかまわないが、やはり個人的にはこのエントリーの後半で書いたような、ネットを見ているだけでは得られない経験にフォーカスすることが、この経験の価値を最大化させる方法だと思う。