ケニア日記

ケニアのNGOでのインターン記を綴っていたブログ。今は電器メーカーの財務で働いてます。

現地人から見た日本人ボランティア

家の屋上でタバコを吸っていたとき、同じフロアに住む女性と話していて来週日本に帰国するんだという話になった。身の上などは話しているので、僕がボランティアをしにこちらに来ていることは彼女も知っている。すると驚いたことに「いつ戻ってくるの?」と言われた。冗談のような感じではなく、真顔で。
戻ってくるのか?ではなく、さも戻ってくることが前提のように「いつ」戻ってくるのかと聞くのだ。その場はいつか戻ってくるよと適当に濁しておいた。
 
何も考えずにいつ戻ってくるのかと聞いただけなのかも知れないが、僕はこれがすごく気になったので考えてみた。一体彼女には僕はどのように見えているのだろうか?
 
 
結論から言うと、彼女には僕は将来的には何らかの形でケニアないしはアフリカの開発に携わりたいと思っている、という風に見えていたのではなかろうか。言い方を変えると、ちょっと自分探しのためにアフリカにボランティアにでも行こうかしら、という日本人の感覚が全く理解できないのだろう。いや、僕は自分探しに来たわけではないが。
 
ケニアでは若年層の失業率が高く、大卒ですらまともな職に就けるわけではない。しかしながらだからといって大学を出なければさらにまともな職に就けるはずもなく、それなりに優秀な人は当然大学を目指すし、アフリカの中では比較的発展しているケニアには留学生もいる。母国で仕事を探すよりナイロビの方が良い条件の仕事を探しやすいからだろう。
そんな彼らからしたら、将来NGOで働こうと思っているわけでもないのなら、一体こいつは何しに来ているのだと思えるし、だからこそそうした分野に強い関心があってわざわざケニアまで来たんだろうなーと思われていたのではないか。
 
 
領事館の在留届ベースでは、在ケニア邦人の数は600人前後らしい。JICA関係者が多く、ビジネスマンは少ない。最近商社のアフリカ進出ニュースなどを目にすることは多いが駐在員など一社につき多くて数人だ。というわけで、現地の人からすれば日本人を見ることはまれであり、何をしに来ているのかなどよく分からないだろう。僕が住んでいるホステルの人の多くはケニアッタ大学の学生だ。ケニア人もいれば、ムハンマドのような留学生もいる。ケニアにおける高等教育は日本のちゃらんぽらん学生がとりあえず大学は出とくか、というのりで行くものとは異なり完全な投資だ。日本だと、高い給料の仕事に就くために良い大学に行きたいというと白い目で見られるが、彼らは良い職を得るために大学に行くのだ。まあ遊ぶ分には彼らも結構遊んではいるが。
 
そんな投資をしている彼らからすれば、ふらふらとケニアに来るという感覚が信じられず、こいつはきっと将来に対する確固たるビジョンとやりたいことがあってケニアに来ているに違いない、そう思われたのではないか(繰り返し断っておくが僕もふらふらと遊びに来たわけではい)。だからこそ、たった2ヶ月ちょっとで日本に帰って、もう戻ってこないとは考えなかったのではないだろうか。
 
たとえば日本だと、夏休み使ってちょっとボランティアに行ってくる、と言ってもそうか、頑張ってねくらいだろう。しかし彼らからすればそれだけの時間と金使って一体何のために?と純粋に疑問に映るのだと思う。このあたりが就職氷河期と言われようとも、いうて就職には困らない国の人間と、職につくのすら一苦労の人間の感覚の差であり、その結果出たのが冒頭の「いつ戻ってくるの?」なのではなかろうか。彼らからしたら良い職に就くためでもない過大な投資は理解できないのだと思う。