ケニア日記

ケニアのNGOでのインターン記を綴っていたブログ。今は電器メーカーの財務で働いてます。

テロリストの思考回路


先日のショッピングモール襲撃事件は世界中で大きく取り上げられたようだが、ケニアではソマリアからの報復テロを頻繁に受けている。ソマリアは内乱の末に無政府状態になっており、その鎮圧にケニアが軍隊を出したからだ。ちなみに今のソマリアは昨年新政権が誕生し、以前よりは状態が改善し復活に向かっているのだが、テロが起きてしまったのはその矢先であった。
 
このような状況で、テロリストは何を考えて報復テロを行うのだろうか?
一番の目的はケニアにダメージを与えて、ソマリアへの攻撃をやめさせることだろう。これ以上攻撃してきたらこっちもただじゃ済ませないぞ、と警告を発するわけだ。一方テロとの戦いにおいては、ここで犯人側の要求に屈するとますます彼らを調子に乗せてしまうので、要求を基本的には飲まないし、むしろさらに報復への報復などを行ったりする。ここら辺はアメリカの9.11への対応などを見ていれば分かるだろう。
 
つまり、現代においてはテロによる牽制機能はあまりない、それがテロリストの戦略だと分かっているために各国が態度を柔らかくすることがないためだ。むしろ報復されるリスクを負ってまで、テロリストはなぜテロを行うのか?頭が悪いのか?それでも多少の報復リスクを負ってでも恐怖を与える方が効果的と判断するのか?組織の士気高揚のためか?
 
どれも当たらずとも遠からずといったところなのかと思うが、今回のテロに関しては経済的ダメージを与えるという意図が強いのではないかと感じた。つまり、仮に一国の政府に対して経済的に強いダメージを与えることができれば戦費の支出が追いつかなくなったり、仮に国債発行や増税で乗り切るにしても財政に大きな負担であり、国力をそぐことになり、国内での反発感情は高まる。そうすれば自分たちへの攻撃も減る、彼らはそう考えているのではなかろうか。
 
テロの王道攻撃先というのは、政府、軍、警察、国連関係施設などだ。たとえばホワイトハウスの襲撃に成功すれば政治機能を一時的に停止させられるだろうし、精神的にもダメージは大きい。ただこういうところはセキュリティが厳しく、最近はあまり聞かない。
次に狙われるのが、ホテル、ショッピングモール、映画館、レストランなどお金持ちや外国人がいるところだ。宗教的な理由で外国人(欧米人)を狙っている場合などによく狙われる、今回のテロでもショッピングモールが狙われた。こちらは本気でテロをやろうと思ったらはっきり言って防ぐのは不可能だ。入り口でも荷物検査やボディチェックは行われているが、今回のように銃を持ってエントランスでいきなり撃つなんてやられたらモールの警備員ごときでは対応しきれない。
ところで、ケニアでは以前からテロリストらによる報復が行われていたが、その対象はケニアの民間人であった。マタトゥが爆発させられたり、現地人が集まっているところで爆弾を使用するなどが主だった。これらの事件の場合、犯人は現場からすぐに逃げるので捕まることはなく、その代わり規模も小さい。それが今回はショッピングモールを襲撃するという自らの命を省みない突撃型に変わったわけだ。
 
今回は自国を侵攻した来たことへの報復なので、ケニア人を狙うというのはまだ分からないでもないが、ショッピングモールを狙うというのは、もちろんそこにもケニア人はいるのだが、やはり経済的にダメージを与えるという目的に明確にシフトしたのかなと考えてみた。ケニアは観光収入がGDPの1割以上ある国であり、工業はまだまだ発展しておらず就業人口の半数以上が農業関係者だ。そのような国で外国人が多く集まるところを襲撃するのはかなりインパクトがあるのではないかと思う。政府はそう簡単びびらないが、民間人は普通にびびるからだ。つまり、ケニアへの旅行をやめようと考えたり、今いる人も早めの帰国を目指すのではなかろうか。現に大統領も、スピーチの中で安全には細心の注意を払うので外国人の皆様は今まで通りケニアに来てほしい、という内容のことを話していた。
 
9.11は圧倒的な報復こそ受けたが、多くの人が飛行機の利用を控え、旅行をキャンセルし、テロリストに恐怖したという意味でテロリストにとって「成功」だろう。今回のテロも世界中の人が旅行をキャンセルしたり、ショッピングモールに行くのを控えればテロリストにとって「成功」なのかもしれない。
というわけで、政府系の施設へ行くことはないだろうが、やはりそれ以上にモールや高級ホテルといったところがもしテロが起こるなら、引き続き危険で狙われやすいと思う。襲撃が容易、かつ与えられるダメージ(経済的な意味で)が
大きいからだ。だからこうした場所に行くのはなるべく控えた方が良いと思っている。ところが娯楽が少ないケニアにおいてショッピングモールを封印されるのはなかなか厳しい。というわけでなるべくエントランス付近は避けるなど気をつけたいのだが、困ったことによく行くJava houseがこれまた入り口すぐのところにあるんだよな…