ケニア日記

ケニアのNGOでのインターン記を綴っていたブログ。今は電器メーカーの財務で働いてます。

予防接種は受けるべきか

ケニアを出国した瞬間、お腹をやられた。何でだ。
ナイロビからインチョンまでの機内は完全に胃もたれ状態だった。最後の方はだいぶ回復したが、かなりつらかった。しかしながら空席率が7割以上で、隣にも人がいないという超快適なフライトだったので、思いっきり楽な姿勢をとって胃もたれをしのいだ。そして、インチョンに着くとお腹の調子が悪くなった。胃もたれは3時に起きて軽食を取り、その後もJavaでのモーニング、機内食を食べて寝るという不規則な行動が原因と思われるが、お腹を壊したのは全く理由が分からない。
 
 
 
さて、今でこそ完全に胃と腸をやられグロッキーな僕だが、ケニアでは予防接種をせずに行き、かつ全く病気にかからなかった。前も書いたが一晩鼻水が出たくらいだ。というわけで今回は果たして予防接種を受けるべきなのか?ということに関して僕なりの見解をまとめたい。
 
予防接種というのは一種の保険だ。たとえば火災保険なら火事に遭ってもその分の被害額を保障しますよというもので、火災自体は防げないが、火災による金銭的な損失はカバーできる(もちろん保険のタイプにもよるが)。一方予防接種は、基本的に当該ワクチンを接種した病気は防げる。火災保険の例で言うと、絶対火事にならないバリアを買えるようなものだ。仮に同じ価格だったらみんなバリアを買うだろう。しかし当然同じ価格ではない。
 
では保険の価格とはどのように決まるのか?今度は生命保険を例にとる。10年以内に死んだら1億円もらえる生命保険があるとしよう。仮に10年以内の死亡率を10%と仮定すると、この保険の適切な値段は1000万円になる。10人いれば9人は普通に生存し、1000万円をどぶに捨て、一人は死んで1億円を受け取るという計算だ。もちろんこの価格で販売すると利益が出ないので、保険会社はたとえば1500万円などで販売することになる。
 
一方予防接種はどうだろうか。予防接種も、被害に備えるという意味では保険なのだが、こちらは金融商品ではないので、たとえば黄熱病の予防接種の価格は別に黄熱病の発生確率などに基づいているわけではなく、ワクチンの原価などで決まる。これは保険との違いである。しかしながら、保険と同じロジックで予防接種を受けるべきかどうかは決められる、予防という性質は同じだからだ。
 
つまり、以下の式を満たす場合のみ僕は予防接種を受けるべきだと思っている。
 
予防接種価格<病気による損失×病気にかかる確率
 
たとえば黄熱病の予防接種は8000円くらいだ。ここでは仮に黄熱病にかかる確率を3%とすると
病気による損失>266,666円を満たすならば予防接種を受ければ良いことになる。
 
それでは病気による損失とは何だろうか?まあ答えはないので個人で勝手に考えてほしいが、僕はその間に生み出せたキャッシュと病気による苦痛で考えるのが妥当だと思う。
たとえばアフリカにいる日本人ビジネスマンは多くが商社マンだ。彼らはアフリカの持つ資源を現地政府、企業などと交渉して獲得することが主な仕事であり、その仕事は数百、数千億円といったレベルの金額が動く。つまり会社からしたらそのような非常に大事な取引を行う社員に倒れられては困るので、予防接種をがちがちに受けさせる。給料だけで見てもアフリカ駐在となれば年収1000万は余裕で超えて2000万くらいだと思うので、とにかくこんな貴重な人材を病気ごときで1週間程度でも失うわけにはいかないので、そのリスクをヘッジするべく予防接種を受けさせる。企業の場合はレピュテーションリスクもあるので、まあ当たり前だろう。
 
一方僕の場合はどうか。生み出すキャッシュはゼロなので、黄熱病の苦痛だけを考えれば良いが、かかったことがないので分からないがまあ5万円分くらいだろうと僕はざっくり考えた。すると上の式では当然のように予防接種を受けるべきではないという結論になる。ちなみに生み出すキャッシュのみで考えるのは学生を評価するにはちょっと不利すぎるかと思ったので、仮に病気にかかって1週間を何もできなくなるとして、この1週間の価値はいくらなのか?という視点からも考えてみた。志も能力もあるすばらしい学生であれば俺のケニアでの1週間は100万円に値する!などと考えるのかも知れないが、謙虚な僕には自分の時間にそこまで価値があるとは言えなかったので、とりあえず航空券と生活費など含め、30万円を費やして10週間滞在するとすると、1週間の価値は3万円になると判断した。これに先ほどの病気の苦痛を足してもやっと8万円だ、まだ受けるには足らない。このように考えて結局どれも受けなかった。
 
ちなみにここでは病気にかかる確率を3%で計算したが、これは病気ごとにケニアでの年間発症者数を調べて実際がどれくらいの確率でかかるのかを計算した、というかしようとしたが統計がなくて全く分からなかったのでなるべく近い病気や地域などで推測してみたが、まあ3%のような相当低い確率だろうと判断した。
 
また、黄熱などは相当の高熱が出るらしいが、ちゃんと病院に行けば死ぬことはないだろうと考えて上では病気の苦痛を5万円としたが、たとえばケニアに行く際には狂犬病の予防接種も推奨されている。狂犬病の場合発症した場合の致死率100%と言われており、死による損害はいくら何でも5万円ではきかず、∞とするのが妥当だろうが、そうするとたとえ狂犬病にかかる確率がたとえ0.000001%でも期待値は∞でたとえどんな大金を払ってでも予防接種を受けるべきということになる。なので狂犬病は正直受けるかどうか迷ったのだが、世界で毎年5万人の死亡者という数字を見て、たかだか2ヶ月の滞在で5万/70億のギャンブルには負けないだろうと判断して接種を見送った。
 
ケニアは黄熱病、破傷風A型肝炎B型肝炎、狂犬病などとにかく推奨されている予防接種が多い。そして僕も調べて知ったのだが、たとえばA型肝炎は最低2回、できれば3回の接種が推奨されており、そのたびにお金がかかるのだ。つまりこれらの予防接種のフルコースをそろえようと思ったら莫大なお金がかかってしまい、僕にはとても耐えがたかった。単純にお金を払うこともさることながら、病気は怖いからなどといって思考停止して医者に貢ぐという行為に僕のプライドが耐えられなかったのだ。
 
 
 
ちなみに予防接種に関しては、調べてみれば分かるが基本的にすることが推奨されている。パブリックな機関が発信している情報であればあるほどそうだ。当たり前だが、彼らからしたら庶民の財布の事情などどうでもよく、それよりも感染する確率は低いので予防接種はしなくて良いですよ、などと情報を発信してしまい、それを真に受けて感染したアホに訴訟を起こされるリスクなどを恐れているからだ。だから基本的にいろいろな予防接種を受けることが推奨されている。病院に聞いても推奨される、なぜなら儲かるから。受けるべきかどうかはこっちで判断するから実際の感染者数の統計を出せと言いたくなるところだが、なかなかそんなデータはない。
 
というわけでみんなもクソみたいな情報は真に受けずに自分の頭で判断することを推奨する。実際は予防接種が必要な病気の多くは感染症でありそれによるモラルハザードの問題もあるという反論もあろうが、それはまた気が向いたら書く。

 

 

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