ケニア日記

ケニアのNGOでのインターン記を綴っていたブログ。今は電器メーカーの財務で働いてます。

なぜ人は髪を伸ばすようになったのか

ケニアの男は99%坊主である。1%くらいが地毛なのかカツラなのか分からないがドレッドだ。女性はカツラの場合も含めて結構編み込んだりと気合いの入った髪型をしているが、ベリーショートと坊主の中間くらいの人もたまにいる。ケニアに限らず途上国、特にアフリカだと男は坊主が多いかと思う。
 
まず、体毛に関してだがこれは皮膚の保護や体温保持など、遠い昔人類がサルから進化した頃は必要だったから存在すると思われる。しかしながら高度に文明が発達してしまった現代においてあまり意味はなさず、全身脱毛してしまうような人もいるくらいだ。数百万年後の人類は体毛など生えないようになっているかも知れない。
次に髪の毛に関してだが、これも頭皮を守るなどの理由もあったのかも知れないが、はっきり言って不要だろう。現にアフリカ人の多くは坊主だし、日本でも野球部や柔道部などは坊主だ。ストイックに生きるだけならいらないし、むしろ長い髪が存在することで洗う手間が生じるし、不便なことの方が間違いなく多い。おそらく人類もマンモスを追いかけていた頃はほぼ坊主だったのではなかろうか、シャンプーも存在しなかった時代ではなおさら手入れは面倒だ。
 
ではなぜ髪の毛を伸ばすようになったのか。
僕はこれをハンディキャップ理論で説明できるのではないかと思う。ハンディキャップ理論とは、生物に生きる上で一見不利な特徴が備わっていることを説明する理論だ。たとえばクジャクの羽が派手なのは雄だけというのは有名な話だ。雌の気を引くために雄はあんなに派手な羽を持たなければならなかったわけだが、自然界において目立って良いことなどない。天敵に襲われるからだ。クジャクも例外ではない。これを説明するのがハンディキャップ理論で、つまり一見ハンデに思える特徴を持っているけども、生き延びているということで自分自身の強さを証明しているのだ。俺はこんなハンデあっても余裕だよーとアピールしている訳だ。人間の女性が金持ちを好きなのは金持ちの方が社会で生きていく力が強いからであり、当然クジャクの雌もこのような、ハンデを抱えてなお美しい強い雄に惹かれるのだ。
 
思うに、人が最初に髪の毛を伸ばしだしたのもこれと同じ理由だろう。つまり髪の毛を伸ばすというのは維持するのにそれだけ手間がかかるのだが、それを維持するだけの余裕がありますアピールをするためだと思う。たとえば日本の支配者階級を見ても公家はなにやらめんどくさそうな髪型をしているし、武士もどう考えても坊主の方が戦闘において有利なのに、ちょっと社会的地位が上がってくるとちょんまげなど作り出して自分の偉さを誇示しようとする。つまり長い髪の毛というのはそれを維持するだけの余裕があるというシグナルとして働いてきたのだと思う。
アフリカに関して言えば、植民地化されるまでは狩猟採集生活ではないにしても社会がそこまで文明化、階級化していなかったために髪を伸ばす風習が根付かずにそれが現代まで続いているのではなかろうか。
 
ところでケニアはだいたい坊主かつ剛毛なので僕のようなさらさらヘアーは珍しく(日本ではどちらかと言えば縮れ毛の分類だがアフリカ人から見ればさらさらだ)、MUYOGの近所のキオスクのおばちゃんはこれがお気に入りで、babyとか言いながらよく触ってくる。